僕は起業する前に、アメリカで日系の小さなアパレル卸会社で働いていました。
そこの社長さんはアメリカで最もお世話になった恩人の一人です。
30年前に貯金ほぼ0で渡米して、地べた這いつくばりながらいくつもビジネスを立ち上げてはぶっ潰して、ようやくアパレル会社の経営に辿り着いた人。
頑固でビジネスについてはクソ厳しいけど情に厚く、いつもパワフルな破天荒社長でした。
日本でサラリーマンやっていたら、まず出会わないタイプ。
破天荒社長の口グセ
社長にはアメリカでの処世術、経営のこと、いろいろ厳しく教えてもらいました。
その人はトイレ掃除にやたらうるさくて、
「トイレが汚いと客とお金が逃げる」
と口ぐせのように言っていました。あまりにも言われすぎてしみついてしまい、独立して3年が経った今でも自宅のトイレ掃除が習慣になっています。
当時社長に掘り下げて聞くことはなかったんですが、今考えるとその意図が手に取るようにわかります。
“プレーヤー”と”マネージメント”両方の行き来が必要な、特に個人事業主やフリーランスなど、個人で始めるスモールビジネスには特に当てはまる話だと思います。
ビジネスに限らず、家事や学業で忙殺されている人にも当てはまるはず。
肉体と心の余裕
ビジネスを立ち上げると、サラリーマン時代には気づかなかった仕事が山のように降り掛かってきます。
営業担当だったら営業だけをやっておけばよかった。書類作成や売り上げの計上はアシスタントがしてくれる。経費は総務がやってくれた。全体の進捗の管理は上司がやってくれる。プレーヤーとしての担当範囲だけを守っていればよかった。
かたや自営業だと誰もサポートしてくれないんで、雑務から事業計画まで文字通り全部自分の仕事です。
ゴミ捨てしてくれる人すらいません。
となると日常業務で仕事がパンパンになります。日常業務に埋もれると、どんどん周りが見えなくなって、ただのプレーヤーになってしまうんですよね。
サッカーでいうと監督が選手としても試合に出場して、フルタイムで走り回ってる状態。
ぶっ続けで走り続けてヘトヘト。
同時に精神的にも疲弊してきます。
フィールド全体を見れなくなり、他の選手のポジショニングからゲーム展開、ベンチの様子まで考える余裕もなくなってしまう。
本来は監督として、グラウンドの外から全体を見渡していないといけないのに。
つまりそこにマネージメントがなくなってしまうんです。
スポンサーリンク
上から広くモノを見る視点を忘れないこと
それだけ忙殺されるひとり社長にとって、「トイレ掃除」は最も優先順位が低い仕事です。
だからおろそかになりがち。
逆に言えば、「トイレ掃除」ができる状態はある程度心に余裕を持てるってこと。
心に余裕を持てると、物事を全体で見る余裕も出てきます。
経営・マネージメントは本来多角的に見る、広い視野が必要です。フィールドの中にいてはいけない存在。
社長の口グセは、まさにこういう意図があるんだと後々気づきました。
- 周りのこと、先のこと、広い視野を持てる状態でいろ
- その状態を保てるような仕組み作り・仕事運びをしろ
- でないと結果的にビジネスは失敗するぞ(=お金も客も失うぞ)
優先順位が最も低い仕事を確認する
これってビジネス以外にも言えると思います。
- 目の前の課題に忙殺され過ぎて周りが見えなくなっている
- 疲労とストレスがたまり、冷静な対処、効率的な仕事ができていない
- 日々の生活に疲れてしまい一歩引いて考える余裕がない
ほんとはふと立ち止まってフィールドの外から自分の状況を観察する時間を作った方がいいはずです。
でもそういうときに限って、周りが見えてないから気づかないんですよね。
確認手段として、「優先順位が最も低い仕事」をいつやるか決めておいて、定期的にできてるか、を覚えておくっていうのも一つの手です。
できていないと感じたら、一旦立ち止まって、自分のパフォーマンス、状況を外から見てみる。
- 本当に100%効率よくできてるか?
- 質と量のバランスは合ってるか?
- 自分が本当にやらないといけない仕事なのか?誰かに振らなくていいのか?
- 仕事の順番は合ってるか?
- 力の入れ方は合ってるか?
それがトイレ掃除である必要はありません。棚の整理でも、ストレッチでもなんでもいいと思います。
逆に「優先順位が最も低い仕事」を定期的にできていたら、心に余裕を持っていいパフォーマンスができているという一つに指標にもなると思います。
では!